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海外渡航者のワクチン
黄熱ワクチン
黄熱は、アフリカや南米で流行している蚊媒介感染症です。アフリカや南米のリスク国に渡航する場合やリスク国を経由する場合には、黄熱ワクチンを接種した証明書(イエローカード)の提示が必要な国があります。
黄熱ワクチンは弱毒生ワクチンで、免疫抑制者には接種できません。1回0.5mlを皮下注射します。日本で黄熱ワクチンを接種できる施設は、検疫所などに限定されています。
A型肝炎ワクチン
A型肝炎は、主に途上国全般で常在している経口感染症です。高度・中等度流行国に渡航する場合には、短期滞在であってもA型肝炎ワクチンが推奨されています。
A型肝炎ワクチンは不活化ワクチンで、3回接種します。接種スケジュールは、初日、2~4週間後、24週間後です。1回0.5mlを筋肉内注射もしくは皮下注射します。
B型肝炎ワクチン
B型肝炎は、血液媒介や性行為による感染症です。急性肝炎や慢性肝炎をおこし、肝硬変や肝臓癌につながることもあります。
B型肝炎ワクチンは不活化ワクチンで、3回接種します。接種スケジュールは、初日、4週間後、20~24週間後です。10歳以上1回0.5ml(10歳未満1回0.25ml)を筋肉内注射もしくは皮下注射します。
狂犬病ワクチン
狂犬病は、動物に咬まれたり、ひっかかれたりして感染します。イヌだけでなく、ネコやサルなど哺乳動物が媒介します。狂犬病は発症すると、ほぼ100%死亡する病気ですので、予防が大事です。
狂犬病のリスクがない国は、日本、オーストラリア、ニュージーランド、英国・北欧などの限られた国だけで、南アジアやアフリカなどを中心に多くの国で発生しています。このため、アフリカやアジアなどリスクの高い国に渡航する場合には、狂犬病ワクチンの接種が検討されます。
狂犬病ワクチンは不活化ワクチンで、1回1.0mlを筋肉内注射します。渡航前の接種回数は3回で、接種スケジュールは、初日、7日目、21~28日目です。狂犬病ワクチンの接種歴のある人でも、動物にかまれたり、ひっかかれたりした人は2回の追加接種することが必要です。
髄膜炎菌ワクチン
髄膜炎菌感染症は、菌血症や髄膜炎など重篤な病気をおこす飛沫感染症です。ヒトに重篤な病気をおこしやすい種類(血清群)はA群、B群、C群、W群、Y群が知られています。
イスラム教の聖地巡礼を契機に髄膜炎菌感染症が流行した事例があり、Hajj巡礼時にサウジアラビアに入国する場合には、髄膜炎菌ワクチンの接種が義務付けられています。その他、髄膜炎ベルトとして有名なアフリカ諸国などに渡航する人には接種が推奨されています。また、渡航国の予防接種スケジュールに入っている場合や留学先から要求されている場合に髄膜炎菌ワクチンを推奨する。
日本の髄膜炎菌ワクチンは、A群、C群、W群、Y群の血清群を予防する4価の不活化ワクチンです。1回0.5mlを1回、筋肉注射します。
破傷風トキソイド
破傷風は、破傷風菌が産生する破傷風毒素によって開口障害や強直性痙攣をおこす感染症です。破傷風トキソイドが含有された三種混合(DPT)もしくは四種混合(DPT-IPV)、二種混合(DT)ワクチンの接種歴がある人は、予防接種終了から10年以上経過している場合には、破傷風トキソイドの追加接種(1回)が推奨されます。一方、破傷風トキソイドを含むワクチンの接種歴がない者は3回接種します。
しかし、破傷風単独だけでなく、ジフテリアや百日咳に対する予防もした方が良いと考えられていて、海外ではTdapが使用されます。日本ではTdapは承認されていません。
ポリオワクチン
世界で伝播するポリオウイルスには、野生株(WPV: Wild-type Poliovirus)と生ワクチン由来で病原性が回復したワクチン由来株(VDPV: Vaccine-derived Poliovirus)があります。野生株が常在している国は、パキスタン、アフガニスタンです。その他、ワクチン由来株による流行がアフリカなどで報告されています。
パキスタンやアフガニスタンに渡航する場合には、ポリオワクチンの接種が推奨されます。とくに、パキスタンに4週間以上滞在して出国する際には、出国時の1年以内に接種したポリオワクチンの接種証明書の提示が必要となりえます。その他、ワクチン由来株が流行しているアフリカなどに渡航する場合にもポリオワクチンの接種が推奨されています。
現在のポリオワクチンは不活化ワクチンです。1回0.5mlを皮下注射します。小児期に経口生ポリオワクチンを2回接種した成人でも、常在国や流行国に渡航する場合には、1回の追加接種が推奨されます。ポリオワクチンの接種歴がない場合は3回接種されます。
日本脳炎ワクチン
日本脳炎はアジアで流行している蚊媒介感染症です。日本脳炎ウイルスはブタの中で増えます。
日本脳炎ワクチンは日本の予防接種スケジュールの定期接種に入っていますので、ルーチンワクチンとして接種歴のある人が多いです。日本脳炎の発生地域であるアジアかつ農村部に長期滞在する者には追加接種が推奨されます。日本脳炎ワクチンの接種歴がない場合は3回接種されます。
ダニ媒介性脳炎ワクチン
ダニ媒介性脳炎は、ヨーロッパから北海道までの広い範囲で流行しています。マダニに刺されてかかる感染症です。その他、感染したヤギの未殺菌ミルク及びその加工乳製品からの経口感染も報告されています。
流行地域に渡航する場合、とくに流行地域で農作業や森林事業に従事する場合、郊外や森林でハイキングやキャンプをする場合、アウトドアスポーツをする場合などには、ダニ媒介性脳炎ワクチンの接種を検討します。
日本国内では2024年3月にダニ媒介性脳炎ワクチンの製造販売が承認されました。ダニ媒介性脳炎ワクチンは不活化ワクチンで、16歳以上は1回0.5ml、1歳以上16歳未満は1回0.25mlを、3回筋肉内注射します。通常の接種スケジュールは、初日、1~3か月後、さらに2回目から5~12か月後です。添付文書には、迅速スケジュールも記載されています。
腸チフスワクチン
腸チフスは、チフス菌の感染によっておこる発熱性疾患です。感染経路はチフス菌に汚染された飲食物の経口感染です。途上国を中心に患者が発生しており、とくに南アジアでの患者数が多い。
アフリカやインドを含めた南アジアなど腸チフスの高度流行地域に滞在する場合には、短期間であっても腸チフスワクチンの接種が推奨されます。
コレラワクチン
現在、コレラワクチンの接種を入国に際して義務づけている国はありません。コレラ流行地域に長期滞在する人は、コレラワクチンの接種を検討します。とくに胃切除後や制酸剤治療を受けている人はコレラの症状が重症になりやすいため接種が推奨されます